化学専攻・教授 堀毛悟史

 
 

2022年は国連において定められたガラスの年でした。ガラスは身の回りを支え、彩るものとして欠かせない材料です。ガラスはその構造に長距離的な周期構造を持たず、結晶と明確に区別されます。ガラスは様々な分野で顔を出します。物理の人はスピンなど、物性を司るパラメータの振る舞いにガラス的挙動を見出しますし、食品だと鰹節はガラスです。化学や材料の分野においては、いわゆる三大材料である高分子、セラミックス、金属それぞれにおいて実用に供するガラスが広く研究されてきました。

私たちの研究チームは、現在、金属と分子をつなぎ合わせて得られるガラスの合成研究を行っています。化学結合の一種である配位結合を用いると、金属と分子の組み合わせで多種多様なガラス構造を作り出せることが分かってきました。しかし基本的に構造はランダム(不規則)なので、X線を用いて結晶のように厳密に形を導くことは難しいですが、近年大きく発展している放射光測定によって、ガラス構造の包括的理解も進んでゆくと期待されます。金属-分子ガラスのユニークな構造により、イオン伝導体や気体分子の分離膜等への材料応用も急速に進んでいます。私としては、ガラスを形成する代表選手である酸化物や有機高分子とは異なる物性を持つガラスの学問をつくってゆくこと、そしていずれは社会に還元できる材料技術として花開けば、と思いながら研究をメンバーと進めています。

図 コバルトとイミダゾールからなるガラス試料